2021年12月30日 Posted by 地方創聖プロジェクト文芸部(SERINA) at 16:01
episode.7 証言
(ノベライズ版の作品情報)
宮崎県内にてテレビ放映(全国にて配信)中の特撮ご当地ヒーロー番組「日神ジャスティオージ」。
その物語が産声を上げるまでの軌跡。
本編で活躍したキャラクターたちの記憶。大善が、石上が、卑弥呼が、ユタカが・・・。
テルヒコ(日神オージ)が―。
クラック(亀裂)し展開、各時代、世界に飛散する物語を熾烈に、強烈な色彩で彩ったキャラクターたちの
神秘に包まれた記憶の真相を解き明かす外伝ストーリー。
第3期となる未来記編(100年後)にもつながってゆく衝撃の「誕生の秘密」が記された
本エピソードを見ずして、この物語(本編)は語れない!そんなストーリーになっています。
伝承の最奥にある真実。
そこでほほ笑むのは、天使か悪魔か
創世の神か。
~あらすじ~
古代日本は消えた幻のクニ邪馬台国(やまたいこく)に秘匿された鏡、アマテライザー。
神秘の鏡の力に導かれた記憶を失った青年テルヒコ(海照彦)は人々を守るべく
突如としてその力を体現させた日神(にっしん)へと創聖(そうせい)し
迫りくる闇よりの使者(マガツカミ)を打ち祓うのだった。
失踪中の祖父大善の残した古文書など手がかりをもとに行動を開始したテルヒコは
自らの失われた記憶を探し人々を闇の巨大組織クロウの手より護るため
地域のNPO法人地方創生プロジェクトを運営する女性、ひなたと共に
表向き(ジャスティオージ/ひなた命名)というご当地ヒーローを名乗り
そのイベント事業の影に隠れ戦うことになる。
鏡のほかに存在していた剣(リューグレイザ―)、勾玉(サクヤイザー)という
三神器を手にする戦士、リョウとハナという仲間を得たテルヒコは
忽然と彼らの前に現れる卑弥呼と、鏡に封じられた謎の女神、ユタカ(アマテラスに関する力を持つ2人の女性)
らの声に呼ばれ、次々と現れるマガツカミたちと無軌道なバトルを展開してゆくのだった。
青年は自らのうちに眠るパワーと闘いの先に何を見るのか-。
この小説は、その謎の真相を密かに書き綴ったものである。
~主なキャラクター~
(本編に登場)
テルヒコ(本作の主人公/日神ジャスティオージ)
熱い激情、心を燃やし戦う記憶喪失の青年。外見年齢推定20代中盤。太陽の神、アマテラスの力を持つ。(彼個人の立ち位置はスサノヲなどに近い)鏡の力で本能的に闇を察知し、人類の闇がある限り存在するマガツカミと永遠ともいえる時の中で戦い続ける。弥生、平安、戦国、昭和、令和と様々な時代(老化せず)変わらぬ容姿で現れ戦いの中様々な人々と出会ってゆく。かなり一本気でストイックなところがある青年で話題や流行に疎い、器用でない天然なところもある。現代にて学生時代は剣道部に所属した。その正体は邪馬台国の戦火の中命を落とした亡国の王子でもある。
(魏志倭人伝に登場する卑弥呼の弟・補佐的立ち位置)
当時ユタカを守り切れなかったことが彼の中でおおきなトラウマとなっている。
単体でも強い霊力を持ち、邪悪を祓う言霊を祭祀用の古代剣に宿し戦う戦士でもある。
ユタカ(ヒロイン/麗神タチバナ)
アマテライザーを通し現れる女神。テルヒコにその日神の力を与える。
本作最大の謎とも言える存在。男勝りで気丈(クール)な面があり、邪神に畏怖されるほどの力を持つが
子供っぽく繊細な面もあり本質は情が深い人物。
敵の台詞から(封印された女神、マガツヒノカミ/アマテラスの荒魂)だと称されることもあった。
石上(冥王イブキとなる)
テルヒコの祖父大善のかつての親友。もと大日本陸軍の歩兵連隊所属。
家に伝わる名刀、天狼丸を愛用する。戦後人類に絶望、魔界に魂を売ったものの一人として
日本を裏で支配する組織クロウ、工作員部隊のリーダーとして暗躍する。
カラスのような黒づくめにペストマスクをかぶり癖のある言動をする。
番組後半では黄泉の国の主九頭龍と契約し冥王イブキとなってオージと
死闘を繰り広げたライバルでもある。
九尾の狐
本作最凶の敵ともいえる存在。本小説では性別不詳の少年、甲三に化け行動する。
様々な時代において陰から人々を己の意のままに操り世界を混乱に
陥れてきた。彼が滅ぼした邪馬台国もその一つであり、テルヒコからは相当な怒りを買っている。
闇の陰陽道を統べる尋常ならざる力の持ち主で、常に周囲を嘲笑いその心は冷血な悪魔のそれである。
人としてのライバルである石上とはちがい霊術という側面でテルヒコの仇である。
卑弥呼
邪馬台国の女王。テルヒコに(火野琴美)という偽名を使い本編第1話でアマテライザーを託した。
大善
テルヒコ(海照彦)の実の祖父。考古学者でもあり、神道にもその造形は深い。穏やかで寡黙な学者肌で戦時中は衛生兵として戦争に参加していた。宮崎県の大学で教授をやっており、当時のテルヒコら友人たちを自らの考古学サークルに招き入れ、全国各地を研究し古代の真相を解明すべく研究していた。実家は日奉神社という神社であり、海家は(古代邪馬台国)の子孫にあたる。アマテライザーは戦前まで神社の宝であり、別系統の同族である石上率いる陰陽連特務機関カラス会(のちの組織クロウ)に命を狙われる。
(イラスト・小林ユキト)※アマテライザーを持ったテルヒコとユタカ
episode.7 証言
町から少し離れた山村集落のとある邸宅で、地方創生プロジェクトのスタッフである石井十蔵(いしいじゅうぞう)はそこに住んでいる老婆から昔起こった戦争体験にまつわるとあるエピソードを聞いていた。
安村鞠子女史(89歳)
彼女が出版社より企画出版している戦争体験を綴ったその書籍は話題で、教育系(N○K)のテレビ局や新聞などが頻繁に彼女の自宅へと出入りしていた。今日の仕事は郷土資料館の企画で戦争体験の文字起こしを含めた聞き取り取材であった。そんななか十蔵は、眼が見えない彼女(鞠子氏)のするとある昔話に異様に食い付いてしまった。
「あ、あんた赤飯たべるぅ?チンすれば出来るやつがあるから、そこの引き出しに、うん。(鞠子)」
チン!(レンジの音)・・・
「うわーおいしそう!なんかすみません!(石井十蔵)」
「そう?こんなんそこのマタックス(スーパー)のやつよ。食べていいのいいの。だれも若い人は来ないんだから。もう~昔のことよォ。沢山はおぼえてないんだけれどごめんねー。その・・・・・」
「(一時間ほど経過)石上さんとこも金持ちやったんよ・・けど旧家のご両親が亡なくなって、息子さんが・・・。」
「名前はなんやったか、マーくんや、そうやあのマーくんが軍に招集礼状で行ったのが最後やったかな・・・。マーくん昔はよくうちにご飯を食べに来ていたんだよ。一緒に銭湯にも行ってたし。よく食べたねえ。」
(※マーくん=石上(カラス男)の幼少時のあだ名)
「いいひとだって、いたのにねえ。はあ。」
鞠子氏はため息をつく。
「だけどもーあんときゃ中学あがってから財産ごと持ってかれたりして。井上家の養子になったでしょお。井上さんとこのぼっちゃまがまーひどく扱ってねぇ、もうわたしも泣いて泣いて。あんときゃ時代がね。人間が人間じゃなかったからねえ。」
「ひぇー!その子そんなとこにいたんですか?!(石井十蔵)」
「うん多分記憶がただしけりゃね。井上さんとこの家の犬小屋に夜おって・・・。息子さんが精神に問題があって。何でかねえ、人じゃない鬼畜よあん人らは。可哀想でね。」
「虐待じゃないっすか・・・。(十蔵)」
「そんで闇市で妙ちきりんな商売したり、見世物小屋で客引きしてたとかもきくし。あーあと・・・。」
「えっ?!そんなのも・・(十蔵)」
「それくらいかな。(鞠子)」
うっ・・・
不快をもよおす十蔵の表情。
「ほ、ほんとに?!」
「いや本当に本当なんやから!ちょっとおかしな趣味のやつも通りにはいたのよォ~!たぶん貧乏でお金に眼が眩んでたんやろね。たぶん。マーくんも・・。あのときはそんげな男もおったから。(目をぬぐう鞠子)」
「人懐っこい子やったんよ。荒んで、
変わっちゃってね・・。なんかあったら私も坊っちゃんたちとかかわんのが怖くてねえ。」
「で坊っちゃんがさー、変死体で見つかってから大騒ぎになってね。鎌鼬(かまいたち)にやられたみたいに。」
「葬式でマーくん笑ってて。ご主人にぼこぼこにやられて。」
「何とかしてやれなかったかなーって。」
「ヤバかったんですねえ。当時は。(十蔵)」
「そう、ヤバかったのよお。いやジョーダンじゃなくって、本当に。(鞠子)」
お婆さんの昔話はあれよと脱線しいつしか彼女の祖先の絵師の話になっていた。
安村英彩というその絵師は児湯地方の秋月藩に支え、藩お抱えの絵師として神社の絵馬などを多数奉納した。
なかでも有名なのが付近の日奉神社(ひまつりじんじゃ)で、別宮の拝殿の天井画の黒髪の女性が夜になると抜け出すという言い伝えを、老婆は青年に語った。
「ちょっとお婆さん、その神社・・・大善さんって、・・・!」
「なに、あんた知ってるの?!そうそうそうよー!あ、なーんだあんた海さんとこの知り合いなの?!なーんだ私の知り合いじゃんせまいねえ田舎は!」
そう、日奉神社とは他でもないテルヒコ(海照彦)の祖父、大善の祖先、「海家」の祖神をまつった古社のことであった。
日神(天照御魂神/アマテルミタマノカミ)を祭る神社で、12キロ先に別宮を持つ。
神宝は「鏡」。大善が生涯通って古文書を研究した神社である。創建は戦国時代の中期とされているが、実際はかなり古く、戦国時代の大友宗麟の耳川の戦いの神社襲撃の被害を受け旧社殿といった「歴史」は焼失してしまっていた。古社たる微かな傍証として、別宮の山中に自然信仰を伝える「岩船」という神々の乗ったとされる岩石、滝のある祭拝場があり、本当の歴史は神話時代まで遡るともいわれる。
「こりゃ連絡せなならんぞ!まてよ・・・!あ、もしもしテルヒコか!お前いますぐこい!(十蔵)」
「(十蔵からの連絡を受け)え?!じいちゃんのことを知ってる人に会ったんですか?!すぐ向かいます!(テルヒコ)」
「あんたら興味あるようだけど・・・」
「行く?神社。」
ニヤリとしたり顔で笑う鞠子おばあさん。なにかを感じたような、なにがしかの勘を働かせたかのような表情であった。
「ええとたしか・・・(箪笥から手探りで)あ、これや。」
鞠子が手探りで探した鍵は、神社の古文書などを納めたケースの鍵であった。
「本当は※橘さんとこの管理なんやけど。20年くらい前からうちが預かっとるんよ。」
※橘家=海家の分家